附属図書館の1年

 

附属図書館長 長尾 眞

 平成7年4月に附属図書館長に就任して1年がたちました。その間に色々なことがありましたが、自己点検の意味も込めて1年間を振り返り、次の年度へのステップにしたいと存じます。

1.利用者へのサービス

 平成7年5月より日曜日も開館することになり、平日は9時〜21時、土曜日・日曜日は10時〜17時の開館となりました。土曜日は平均して約1000人、日曜日は約 600人の入館者がありますが、学期末の試験期には平日で4000人以上、日曜日でも1000人を越える入館者のある日が何日もありました。学生諸君がいかに図書館の利用、図書館での学習を頼りにしているかが分かります。
 土曜・日曜開館は、教官・研究者にも大変喜ばれています。週日には色んな仕事で忙しく、ゆっくり文献調査ができないという人は非常に多く、そういう人達にとって土曜・日曜の図書館での文献調査は欠くことのできないことであります。平成8年度からは土曜日はもちろん日曜日も入庫できるようになりましたので活用していただければ幸いです。
 ILLサービス(図書館間相互利用サービス)も毎年増加しており、本年度は附属図書館における文献複写の受付が約1万8千件となり、他図書館への依頼が約5千件となりました。ただ、これらのうち、約3200件の受付は謝絶となりましたことは相互利用の精神に照らして残念なことといわねばなりません。ILLサービスにともなうコピーサービスは1年間に約20万枚にのぼっております。これらのサービスは昨年に比べてほぼ20%以上の増加であります。
 図書館におけるもう1つの大切なサービスはレファレンス・サービスであります。これは参考業務という聞きなれない言葉に翻訳されているせいか、あまり広く知られておりません。図書館が関係している情報については何でも、問い合わせに対して調査し回答するという、利用者にとっては大変ありがたいサービスなのです。これも毎年少しずつ増加して来ており、附属図書館カウンターでの受付が年間約4500件(1日平均15.6件)、電話による受付が年間約2300件(1日平均 7.9件)、FAXや手紙による受付が年間約4600件(1日平均15.7件)となっております。質問は種々さまざまですが、場合によっては相当な時間をかけて調べる必要のあるものもあり、最も時間のかかる知的作業となるサービスであります。
 図書館にも電子化の波が押し寄せて来ておりますが、その第1ステップはCD-ROMの活用であります。今日辞書やデータはもちろんのこと雑誌や本、目録類が色々とCD-ROMの形で出版されております。附属図書館では、5〜6年前からスタンドアローンのCD-ROM検索装置を入れ、現在約15種のCD-ROMの検索サービスを提供しています(学内では40種)。しかしながら、これらは図書館へ来ていただかねば利用できないという残念な状況にあります。このような状況の中で、咋年度の総長特別経費でCD-ROMサーバーシステムを購入でき、MEDLINE(医学・生理学文献リスト)を吉田地域においてオンラインサービスして来ました。これは土曜・日曜も含んでの24時間サービスであり、研究者は自分の研究室からいつでもこれを利用することができますので、最近では6000回/月以上アクセスされており、好評を得ております。他のCD-ROMについても学内のオンラインサービスをやりたいのですが、そのためにはさらに1千万円以上の経費が必要となり、そうでなくても乏しい図書館予算の中でこれを実現することは不可能であるといえ、誠に残念なことであります。ただ、このような状況の中理学部を中心としたグルーブがGeoRef(地質学文献リスト)を導入し、これを附属図書館のCD-ROMサーバーにのせて全学の利用に開放して下さることは大変ありがたいことであります。このようにある部局で導入されるCD-ROMで全学に開放して下さるものについては、附属図書館でお世話をさせていただきますのでよろしくお願いいたします。
 以上のように、利用者の図書館に対する期待は年を追って高まって来ていますので、我々図書館員はその期待に応え、良質のサービスを提供できるよう色々と努力しているわけであります。なお念のために付言いたしますと、これら全てのサービスについては誰がどのような本を借りたとか、どのような質問をしたといったプライバシーについては十分な配慮をし個人のプライバシーを完全に守っておりますので、気楽に図書館の全機能を十分に活用していただくよう期待しております。

2.展示会・講演会・講習会

 図書館の行なうべきサービスのもう1つのものは、時に応じた展示会、講演会あるいは講習会を開催し、多くの方々のお役に立つことであります。平成7年度は次のような行事を行ないました。特に展示会は広く市民に公開し、多数の参加を得ました。

  展示会:
 (1)舎密局から三高へ(京都大学へつながる第三高等学校の創立前後の写真・資料展示)
 (2)幕末・明治期の古写真展(国立大学図書館協議会主催、長崎大学図書館所蔵の古写真を中心に、附属図書館所蔵の新聞文庫の資料も合わせて展示)

  講演会:
 図書館に関係するテーマの講演会を7回開催しました。
 (講師:長尾図書館長、富士通今井氏、海原総合人間学部教授、国際日本文化センター白幡助教授、ワッテンベルグドイツGMD研究員、イワノビッチロシア図書館員)

  講習会:図書館に関した各種講演会を行なった。特にインターネット講習会は実習を伴ったもので本学職員を対象に、1回目 240名、2回目 120名の参加があったが、希望を満たしきれていない。これは学術情報ネットワーク機構、大型計算機センター、情報処理教育センターと共催したもので、附属図書館からも演習指導者を派遣した。また、4月には新入生を対象として図書館利用法、OPAC検索法などの講習会を昼休みの時間などを利用して6回行なった。そのほかにNACSIS‐IR地域講習会、JOIS講習会、NACSIS-ILL地域講習会、学内目録講習会、地域目録講習会など多くの講習会を行なっている。

3.1次情報の充実と2次情報の整備

 館長になって一番驚いたのは一般図書購入費が非常に少なく、年間3千冊程度しか一般図書を購入していないことでした。開架図書10万5千冊(うち、一般図書 8.2万冊、辞書などの参考図書 2.3万冊)は少なくとも10年で更新すべきものですが、このためには1年当り約5800万円を必要とします。現在はその4割しか予算の手当ができていません。それでも本年度は種々のやりくりをしながら参考図書類の更新に少しウェイトを置いて昨年よりも多くの図書を購入することが出来ました。
 さらに驚いたことには、外国の新聞が The Time 1紙を購読しているだけで、外国の有力な週刊誌、月刊誌はほとんど購入しておりませんでした。京都大学には世界各国から研究者・学生が来ておりますし、日本人学生も国際的な視野をもつためには諸外国の主要な新聞や雑誌に目を通すことは大切なことであります。そこで新たに外国新聞8紙、外国雑誌7誌を乏しい予算をさいて購読してもらうことにしました。多くの方々に読まれることを期待しております。それにしても雑誌の種類はそう多くありません。これをもっと増やして魅力のある雑誌コーナーを作り、利用者の方々に図書館に足を運んでもらえるようにすることも1つの課題であります。
 図書の購入は先生方にもご協力をお願いし学生諸君からの要望を参考にしながら選書委員会で選定しております。発注・受入から閲覧に供されるまでの時間をできるだけ短くするよう努力しておりますが、現在最も早くて20日を要しております。もっと長くかかる本も沢山ありますが、できるだけこの時間を短縮し、新しいものを早く読んでいただけるよう努力しているわけであります。
 2次情報の整備というのは目録カードの情報をコンピュータに入れ、端末装置から図書資料の所在情報を知ることのできる目録情報検索システム、いわゆるOPACと呼ばれているものです。本学には約538万冊の図書資料がありますが、そのうちOPACで引けるものはわずかに40万冊余りであります。毎月新しく購入する図書については一部の部局を除いてほとんど全部目録情報がコンピュータに入力されておりますが、過去に遡って入力する、いわゆる遡及入力は遅々として進みません。幸いに7年度は文部省の計らいもあって4万件余りの遡及入力ができ、昭和61年以降の洋図書はほぼ全てOPACで検索が出来るようになりました。しかしOPACで出て来ないから所蔵していないとは必ずしも言えず、どうしても目録カードを調べねばならないという2度手間をしなければならない場合もあり、利用者にご不便をおかけしております。目録カードの遡及入力には膨大な費用がかかりますので、毎年少しずつでも計画的に入力してゆくことが大切で、そのためにどのような体制を取り、どのように予算措置をすべきかが大きな課題であります。

4.附属図書館施設の改善

 附属図書館は昭和58年に建てられて以来11年を経過しましたが、その問施設・設備はコンピュータ設備を除いて当初のままで今日まで来ております。その結果、入退館システムはしばしば故障し利用者にご迷惑をおかけしておりますが、他にも地下書庫の電動集密書架が故障したりします。保守点検を行っておりますが事故につながりかねませんので、更新する必要がありますが思うにまかせません。
 附属図書館の閲覧席は現在966席ありますが、入館者が3000人を越える日が非常に多く、閲覧席はほとんどいつも満席という状況であります。試験期は特にひどい状況ですので7年度は3階の共同研究室を2室臨時の閲覧室として学生諸君の利用に供しました。
 このような状況を改善するための予算要求はしておりますが、なかなか認められないため、総長特別経費をお願いして、7年度末に入退館システムを新しいものに入れ換えるとともに、閲覧席も 112席増設することが出来ましたが、これは本当に有り難いことであります。そこでこの機会に2ケ所に分かれていた雑誌コーナーを1つにまとめ、新聞コーナーの隣に持って来て、新聞・雑誌をゆっくりとした気分で読めるようにソファーなども増設いたしました。図書館に入ったすぐ南側の大きなエリアがこの新聞・雑誌コーナーです。ぜひご利用いただきたいと思います。この変更にともなって目録カードは1階の正面奥へ移しましたのでご注意いただきたく存じます。
 附属図書館の施設・設備の改善については多くの課題があります。電動集密書架の更新はもとより、地下書庫内での個人の安全を確保するための工夫、地下書庫内での簡単な閲覧のための机の設置、AVホールでのパソコン使用のための電源や情報コンセントの設備、特殊資料閲覧室の改善、特にマイクロフィルムやマイクロフィッシュの閲覧・コピーの機械(リーダープリンター)の更新など、あげればきりがありません。書庫はあと10万冊の収容能力ですが、そのための書架を購入する必要もあります。書庫は各部局の古い稀用雑誌を持ち込んで管理するバックナンバーセンターの機能も果しております。雑誌だけでなく図書などで使わなくなったものを保管することも可能ですが、その場合には附属図書館への供用換をしていただかねばなりません。どの部局図書館(室)でも保管スペースの問題は深刻で、お互いに協力しなければなりませんが、数年先には完全に満杯になってしまいますので、新しい図書館の建築計画もそろそろ検討しなければなりません。京都大学の附属図書館の床面積は他の有力大学のそれに比べてかなり狭いというのが実状であります。

5.電子図書館化への努力

5.1 図書館情報システムの更新

 現在の図書館情報システムは平成6年1月に更新したもので、学内64ケ所の図書館(室)のほとんどと、学外の3つの大学の図書館をつないでサービスを行っております。しかしながら、本学における歴史的な経緯もあって、受入・目録業務と貸出業務が全く違ったシステムで動いており、図書情報データベースで内容のほぼ同じものが重複して存在し、システム相互間のデータ変換に時間がかかるなど、現在という時点から見ると全く欠点だらけのシステムであります。また、貸出システムはソフトウエアを導入してから長期にわたって安定せず、全学の図書館職員の方々や利用者に多大のご迷惑をおかけいたしました。ここに謹んでお詫び申し上げます。
 このようなことから、システムを抜本的に入れ換え、各図書館(室)で必要とされる数の端末装置を導入する必要を感じ、館長に就任した直後に図書館情報システムのレンタル料増額の概算要求をすると共に、次期システムとしてどのようなものを導入する必要があるかの検討委員会を作って鋭意検討をしていただきました。その際各部局のご要望をお聞きすること、そこでの問題を明確に把握することに十分留意する努力をいたしましたが、それが十分であったかどうかは分かりません。いずれにしても熱心な検討の末に分散データベースのシステムで端末数は 300、そのほかに研究室の任意のパソコン端末から学内ネットワークを経由してアクセスできるシステムという姿が浮かび上がって来ました。しかし残念ながらレンタル料の増額は認められず、その他いくつかの理由から本年にシステムの更新作業に着手するという案は断念せざるを得ませんでした。関係者に色々とご迷惑をおかけし申し訳けなく思っております。しかし次年度にはかならず更新の手続きを開始し、遅くとも平成10年1月には最新の便利に使えるシステムに変えたいと思っております。皆様のご希望をよくお聞きし、十分満足していただけるシステムに致すつもりであります。ご要望をお寄せ下さるようお願い致します。

5.2 電子図書館システムの開発

 私が館長になる前から研究開発しておりました電子図書館システムAriadneは附属図書館にも設置し、BBCC(関西文化学術研究都市にあるマルチメディア関係の財団)の全面的な協力によって附属図書館の各種資料を電子化し電子図書館の充実を図ってきております。このシステムのコンセプトは世界的に見ても最も進歩したもので、毎月多くの見学者の訪問を受けております。
 このようなことの他に、インターネットに附属図書館のホームページを開設し、日本語でも英語でも図書館の内容を知ることができるようにしました。開架図書10.5万冊についてはOPAC検索がホームページを通して行なえるようにしておりますので、一度だけホームページを覗いて見るというのでなく、実際の利用にも十分役立つものとしております。平成8年5月からは約60万件の図書資料の検索がインターネットを通して出来るようにしたいと思っております。ぜひ一度附属図書館のホームページを覗いて下さい(URL:www.kulib.kyoto-u.ac.jp)。これからは京都大学が創り出す情報を世界に向って発信して行かねばなりませんが、このような時代における大学の中での図書館の位置づけ・役割りはどうあるべきかを学内の教官・職員のコンセンサスを得ながら明らかにして行く必要があるものと考えております。
 7年度の補正予算で学内LANの高速化が実現され、 100台の最新型のパソコンが導入されることになり、お願いしてそのうちの50台を附属図書館に設置していただきました。その一部は附属図書館の職員が使いますが、他は3階に新たに端末機器室を開設し、一般の利用者に広く開放し使っていただくことにしました。インターネットのために使用できるのはもちろんのこと、その他どのようにも使用できますので、ぜひともこれらの端末を利用して下さい。図書館はこれまでのように図書資料だけを扱う場所ではなく、あらゆる学術情報を対象とできるように徐々に活動範囲を拡大して行くべきものと考えております。CD-ROMのオンラインサービスもその1つですが、もっとやるべきことはいろいろとあります。

6.組織の検討

 現在附属図書館には3課10掛がありますが、その中の雑誌・特殊資料掛は雑誌の受け入れ、製本、古典籍、マイクロ資料類、その他を扱って来ておりましたが、これは和書や洋書などのようにはっきりした物(図書資料)以外の、いわば何でも屋とでもいった部類に属するものの受け入れからサービスまでを行って来た最も困難な仕事をする掛でした。そこで掛の業務から雑誌の受け入れ関係は図書受入掛に移し、業務内容をできるだけ整理・明確化し、この掛の業務内容を少し変更するとともに、その場所も他のカウンター業務との関連で仕事のしやすい一階に移動しました。このように業務内容と組織とは時代の移り変わりと共に常に見直して行く必要があるものと考えます。今後はCD-ROMなどをどの掛がどのように扱うか、コンピュータヘの目録カード情報の遡及入力をどのような体制で進めるか、急速に進歩し、ますます複雑になってゆく図書館情報システムの管理運用のための掛をどうすれば強化できるか、インターネットのようなネットワーク上の探索をしたり、ネットワークで結合された世界の図書館群と相互協力して行くための人材育成とその組織化をどうするかといった種々の問題があります。このような課題に適切に対処して行くためには図書館員の不断の勉強が必要であることは言うまでもないことであります。
 現在図書館は高度情報化、電子図書館化、広域ネットワーク化、相互協力化の方向へ急速に進んでおりますが、これらのいずれをとっても難しい課題が山積しております。このような課題に対しては日常業務を第一に処理しなければならない図書館員だけでは対処することは不可能ですので、従来附属図書館に設けられていた調査研究員制度を強化して研究開発室を設け、学内の有識者はもちろんのこと学外の有識者にも参加していただけるよう組織改正をいたしました。この研究開発室は今の所学内(館内)組織で研究員は総長に発令していただく兼任の方々ですが、将来は文部省の認める粗織にして行きたいと思っております。この研究開発室に兼任で来て下さる方々の多くは教官であり、科学研究費の申請が出来ますので、そういったことを通して将来の理想的な図書館の実現に向けての研究開発を活発にして行きたいと考えております。

7.百年史編集史料室

 京都大学は1997年6月に百周年を迎えます。これを記念して種々の計画が進められておりますが、京都大学百年史全7巻7000頁と写真集1巻の編集・出版も重要な計画の1つとなっております。その準備は数年前から着々と行われて来ましたが、編集・出版の中心となる百年史編集史料室が昨年の7月に正式に設けられ、附属図書館の中に置かれることになりました。この史料室は既に京都大学創立時代からの各種の貴重な資料と数千点の貴重な写真を収集しておりますが、これはまさに図書館活動の一貫としてみるべきものであって、この史料室が図書館に置かれたのは理由なしとしないわけであります。今後ともこのような資料を蓄積して行くと共に、その整理をうまく行なって将来公開できるものは公開して行くということになるでしょう。京都大学百年史は、このような地道な資料収集の上に作られるもので、我国の大学史における1つの記念碑的出版物となるでしょう。

8.おわりに

 附属図書館商議会は図書館の最高の意志決定機関であり、予算を始め多くのことを決定していただいてまいりました。しかし図書館には商議会の課題にするほどではないけれども実質的には十分な時間をかけて審議していただきたい問題も多くあります。例えば、附属図書館の諸活動に対する詳しい点検・評価も重要な課題の1つであります。このような課題を審議するために平成7年3月に商議会の下に専門委員会を設置していただき、平成7年度中に9回の会議を開催していただきました。図書館の実態の見学をも含んで種々の問題について審議をしていただきましたが、上に述べてまいりました図書館の活動のいくつかはその審議の結果によるものであり、ここに貴重な時間をさいて審議いただきました専門委員会委員の先生方に感謝申し上げます。

 以上は、私が館長に就任して1年間に行なってまいりました事と現在における私の考えでありますが、いろいろと思い違いや、あるいは間違ったことをしている可能性があるかと存じますので、皆様方の率直なご意見をいただきたく存じます。そして少しでも利用者にとって使いやすい、良い図書館にして行きたいと思っておりますのでよろしくご協力くださいますようお願いしたいと思います。


[Top Page] [Home Page]